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『老子』を読む。 [Books]

 日本の文化には、儒教的要素が、かなり根深く入り込んでいると思える。
 数年前から、よくいわれることだが、官僚主義の弊害が、ここ数年の日本に閉塞感をもたらしているとも思える。
 私は、儒教のエッセンスを否定するものではない。儒教には儒教の素晴らしさがあり、そのエッセンスで、人が学び身につけるべきことも大いにあると考える。
 ところが、儒教に染まりすぎると、日本人が本来持っていたはずの素晴らしさを曇らせることもあり得ると、私は考える。
 儒教にも、素晴らしい真実があり、それに反するものにも素晴らしいものがあるということを、私達は知る必要があるように思えて仕方がないのである。
 儒教に縛られすぎることの弊害を正すために、何らかのアンチテーゼが必要だ。

 これはひとつの例えであるが、例えば、フランスの学校では、上級生で学問が苦手であったり怠け者である人と、下級生で年少であるけれども、学問にも真剣に取り組み人柄も温かくおおらかな人がいたとする。この場合、フランスでは、後者の方が立派であると、誰もが認め尊敬されるというのだ。
 ところが儒教に縛られた社会ではこうはいかない。
 どんなに、怠け者で、人柄も品性も無く、慈愛もなかったとしても、儒教社会では、上級生の方が偉いということになる。
 これは、極端な例であるが、そういう空気は、この日本にも確かに根付いている。

 では、そのような弊害を無くすためにどのような哲学や思想が必要なのであろうか。

 私が思いつくのは、例えば、「禅」の思想であったりする。また、ドラッカーなどの経営哲学も有効に思える。
 そして、古来より儒教への強烈なアンチテーゼとして、『老子』が存在してきた。

 日本という国が、新たな飛躍を遂げ、閉塞感から脱却するために、今ふたたび、『老子』を読んでみることは、とても有意義なことに思える。
 また、個人レベルにおいても、家庭や職場での苦しみから脱却し、飛躍を遂げるためにも、『老子』を読んでみることはとても有効なことに思える。

老子―無知無欲のすすめ (講談社学術文庫)

老子―無知無欲のすすめ (講談社学術文庫)

  • 作者: 金谷 治
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1997/04
  • メディア: 文庫


 私が、どれぐらい前なのだろうか、二十年ほど前に読んだ『老子』は、別の文庫だったかもしれない。
 現代人にとっては、結構難解に思えるかもしれない。逆にいうと、それほど私達は「儒教」的思想に縛られているともいえるだろう。私がいえるのは、よくわからないまま老子を読んでいても、すがすがしく軽やかな気持ちになってくる経験を若い頃にしたということだ。

 先程見つけた、『タオ―老子 (ちくま文庫) (文庫) 加島 祥造 (著)』は、現代口語訳になっていながら、老子のエッセンスが伝わるという評価もある。私も、この本を購入してみたい。

タオ―老子 (ちくま文庫)

タオ―老子 (ちくま文庫)

  • 作者: 加島 祥造
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2006/10
  • メディア: 文庫



 活字がどうしても苦手な人には、『マンガ老荘の思想 (講談社プラスアルファ文庫)』という本も出ている。
 この本に関しては、私も数年前に、書店でパラパラと立ち読みしてみた。あまり良い本とは思えなかったが、今の日本人にとっては、このようなコミックの形であったとしても、老荘思想を全く知らないよりはまだマシだとは思える。

マンガ老荘の思想 (講談社プラスアルファ文庫)

マンガ老荘の思想 (講談社プラスアルファ文庫)

  • 作者: 蔡 志忠
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1994/09
  • メディア: 文庫




 ドラッカーについての私の過去の記事。
 http://blog.so-net.ne.jp/tabibito_j/archive/c35368829

 禅に関しての私の過去の記事。
 http://blog.so-net.ne.jp/tabibito_j/2006-10-15


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コメント 2

おっしゃられる意味は理解できますが、儒教が日本にとってどれほど影響を与えたかについては、いま少し検証が必要かと思われます。
わたしは韓国をライフワークにしていますが、韓国での儒教はわれわれ日本人が想像する儒教と質的な違いを感じます。
逆に日本がもっと儒教の影響を受けていたら、今日的な親子の問題などはまた違った様相を呈していたかも知れないかなって思ったりします。
とてもいい問題提起に感謝します。
by (2007-09-10 08:28) 

旅人J

 cocoa051さん。ありがとうございます。
 韓国と日本を比べると、日本とは比較にならないほど、儒教が深く根ざしているのが韓国であるということを理解しています。私は残念ながら韓国について深い理解があるわけではありませんが、近年の韓国が、経済的にも文化的にも大いに発展を遂げつつあり、とても勢いがあることは感じます。その良き発展の根底に、儒教の良き働きがあることも想像できます。cocoa051さんの書かれている、「今日的親子の問題が違った様相を呈していたのではないか」というのは、私も同感であります。
 ひとつはっきりしているのは、韓国の知識人の方々は、外国文化の、「良くないもの、退廃的なもの」などが、韓国に流入することを阻止しようと努力されてきたことはあげられるかと存じます。そういう努力も、深い儒教の理解があればこそと思えます。
 日本の遙か昔からの国柄として、海の外から入ってくるものは、割と無批判に、良きものとして受け入れる傾向が明らかに見られます。そして入ってくるものは、「日本」色に染まった形で日本に定着したりもいたします。そういう日本では、近年、残念なことに退廃的な外国文化も流入し、悲しい親子関係などの問題にもつながっているように私は理解しています。そういう日本という国においては、儒教をさらに深く理解することも大切であろうとも感じますし、また、老荘思想という違う思想のエッセンスも学ぶ。そういうことによって、新たなるより高い次元に人々が上がってゆくことが必要なのではないかと考える次第です。
by 旅人J (2007-09-10 16:19) 

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